月別アーカイブ: 2013年9月

ヤモリ

初めてその姿を見たときは、ムカデ、ゲジゲジ、クモ、ナメクジ…、木立の中にある家ゆえに何でもありは受け入れざるを得ないことではあるけれど、ああ、お前もいたのかやっぱり、と覚悟した。
四肢を開き、ガラスにへばりつき、白い腹をヒクヒクさせている。拡大すればイグアナか恐竜にも似ている。
けれど、ここで暮らしてもう十余年である。いろいろな事柄やモノにもなれてきた。
ギャアギャア騒ぎながら殺虫剤攻撃やスリッパで叩きのめしていたムカデでさえ、いまでは慌てることなく静かにお湯をタラリンとかけて、弱ったところをトングで挟んで戸外へポイと捨てる。
長くておびただしい数の脚で歩き回るゲジゲジは、噛まないと聞いてからは両掌に囲いこんでこれもポイ。
ガラスにへばりつくヤモリを見続けるうちに、その姿はユーモラスで可愛いと思い始めた。昆虫やクモを食べるそうだし、家守とも書くらしい。
台所の流し台に向かえばヤモリがガラス面をチョロチョロと移動する。
この頃、ヤモリが二匹いることがある。実は日々、交替で出てきていたのかも知れない。二匹同時に見たのは初めてのことだった。
ひょっとして、恋人?嫁さん?
ずいぶん小さなヤモリも現れた。さては、家族がいたのか?
気になっている。

青空

山を崩し、川を氾濫させ、家を壊し、稲をなぎ倒し、おおぜいの人を泣かせて嵐が過ぎて行った。
小さなわが家は木立の中にある。
暴風雨に木々が騒ぐのが恐ろしく、一晩眠れぬ夜を過ごしたけれど、夜が明けてみれば、大小の枝や葉がおびただしく散乱しただけですんだ。
嵐のあとは青空が続いている。
青空になってもなお、枝や葉が落ちてくる。密集している木々の枝に引っ掛かっていたものが、風が吹けばパラパラと落ちてくる。
青空の下で小学校の運動会が行われた。
隣家のこどもたちの奮闘ぶりを見に出かけた。
母校である。創立140周年を迎えたと放送されている。
半世紀以上も前、わたしが通っていた当時は1学年に2クラスあった。3クラスの学年もあった。クラスには40人、いやいやもっと多かったか?
いま、児童数は160人に満たず、どの学年も1クラスだそうだ。
運動場がたっぷりと広いせいか、こどもたちが少ないからか、駆けたりダンスをする姿が遠くに見える。
クニクニとかわいく腰を振ってダンスをする隣家のことちゃんを見つけた。
秋、青空、踊るこどもたち。ちょっと幸せな気分になった。

身勝手

久しぶりの青空に、空を見上げて綿のような雲、うろこのような雲、飛行機雲が尾のように延びていく様子にも感動した。
翌日は一片の雲もない青空。昨日に増して晴れやかな気分になった。
三日め、四日めも晴れの上天気。
なんということ。気分が晴れない。
暑い。
もういなくなったかと思っていた油蝉が、ツクツクホーシを抑えて声を振り絞るかのように鳴く。
校庭では応援合戦の練習中のようだ。元気な声が届いてくるが、暑かろう?大変だねと思ってしまう。
残暑が厳しい。青空と太陽がうらめしい。
年齢のせいか?
身勝手なこと。青空をあんなに喜んだのに。

ああ、やっと秋の風。

9月9日、紙障子に朝日が。何日ぶりのことだろう。
もう9月。初めての秋の陽射し。
空が青い。雲が白い。綿を薄く引いたような雲。もあもあとうろこのような雲。飛行機雲。
長い雨日和にたっぷりと水分を含んだ木々の、幹も葉もいきいきとして鮮やかだ。
ああ、やっと秋の風。秋の空。
風に乗って歓声がやってくる。校庭で運動会の練習が始まっているのか?
オーシツクツク つくづく惜しいと法師蝉が夏の終わりを告げる。