春の味

小さな家の前に草地がある。少しずつ春めいてきた日々、草を刈った。
茅やよもぎや野菊の立ち枯れが一面を覆っていたのを刈ろうとした。
陽射しも春めいて、家の中よりも外の方が暖かくなってきたころのことである。
草刈りはいつも、もっと青々と繁ってくるとお願いをして刈り取ってもらっている。草刈り機械で2時間ほどやってもらえばすっきりときれいになる。
凍てつく毎日に冬眠状態で過ごしていて、ふいと草刈りなどしてみようかという気分になった。
以前にはあったはずの草刈り鎌が見つからず、枝を切る鋏があるばかり。
しゃがんで両手でガシャガシャと切る。けっこうな重さがあるが枯れた茅が刈り取れるのは気分がよい。
通りがかった隣人が珍しいこともあるものだと立ち止まり、草を刈るには道具が違うとのご忠告である。
鎌を貸そうとのご親切をお断りしたが、きっと隣人はまた別の隣人に、笑いながら重い枝切り鋏で草刈りをしていたと告げているだろう。
親切なお隣さんたちのどなたかが、やがて草刈り鎌を届けてくださらぬうちに草刈りをきりあげて、家の中へと退散したのでありました。

天気の良い日は、あいかわらず重い枝切り鋏をさげて出て、しばらくの時間、枯れた茅やらよもぎを刈った。
肩や腕が痛くなると作業を終えた。いつもほぼ1時間の作業時間であった。
1週間も過ぎたころ草地はあらかたきれいになった。
計画も立てず、あちらからこちらから、なるべく通りがかりの隣人の目にふれないような位置を選んで刈っていたら、なんだか2ヶ所、離れ小島のような刈り残しができた。
陽気が進んで草を刈るには暑くなった。

きれいになった草地はどんどん緑が拡がって、ワラビが出始めた。まだ小さなワラビを摘んでゆがいて、出し醤油と花かつおたっぷりかけて食べた。
つくし、ワラビ、これから蕗も出てくる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>